緑内障で視野が欠損する仕組み
1.眼球の神経の構造
脳から約100万本の神経線維が眼球内に入ってきて朝顔状に広がり、
網膜という光を感じる膜を作ります。その100万本の神経線維が眼球に入り
朝顔状に広がる根元の部分を視神経乳頭と言います。
視神経乳頭では、神経線維が90度直角に曲がり広がって網膜を作ります。
その90度曲がる部分の視神経繊維は圧力に弱いのです(図1)。

2.緑内障とは
眼圧が上がることで、視神経乳頭を圧迫し、神経線維が1本1本死んでいき、
死んだ部分の網膜は光を感じなくなり、視野の狭窄を生じる病気です。
視神経乳頭への血流が悪くなることでも神経線維が死んでいくことがあります。
死んだ神経線維は厚みをなくすので、視神経乳頭のくぼみは大きくなります。
正常な視神経乳頭のくぼみは40%程度ですが、緑内障末期になると90%以上が
くぼんできます。こうなると視野のほとんどが見えていません(図2)。
しかし、その変化は、10年、20年と長い期間を経てゆっくりと進みます。
このため、自覚しにくいのです。

眼圧が上がる仕組み
眼球は、水とゼリーで満たされたボールにたとえられます。
眼内の水を房水と言います。
角膜と虹彩の根元の部分を隅角といい、眼内の水(房水)はここから排出されます。
房水は、虹彩下の毛様体突起で生産され、水晶体、角膜などに酸素と栄養分を
供給しています。このため、房水の生産はいつも一定です。
しかし、隅角が何らかの理由で目詰まりを起こして、房水が排出されにくくなると、
他に房水を排出する部位がないため房水がたまり、眼圧が上昇します(図3)。

緑内障の種類
日本人のうち約5%が緑内障に罹ると言われています。
緑内障には大きく分けて3つのタイプの緑内障があります。
(下記は一般的な名称で学術的に正しい名称とは必ずしも一致しません。)
1.開放隅角緑内障
隅角が正常な角度を保っていても眼圧が上昇する緑内障です。
2.正常眼圧緑内障
眼圧が正常値でも視神経の萎縮と視野欠損を認める緑内障です。
3.閉塞隅角緑内障
角膜と虹彩で形作られる隅角が非常に狭く、
房水が流出しづらくなることで眼圧が上昇する緑内障です(図4)。
緑内障のうち約12%がこのタイプの緑内障です。
無治療の場合は、風邪薬、睡眠薬等の薬剤でさらに眼圧が上がるので、
薬の制限があります。
レーザーで虹彩の隅に穴を開ける治療(LI)を行った場合は、
薬の制限は無くなります。

緑内障の治療
治療は、まずは眼圧を下げることが何より大切で、眼圧を下げる目薬を使います。
それにより、正常眼圧(21mmHg以下、平均15mmHg)に近づけるようにします。
しかし、いくら点眼薬を使っても眼圧が下がらず、視野の欠損が悪化する場合は、手術を行い眼圧を下げます。
緑内障手術の主な種類
1.線維柱帯切除術(Trabeculectomy)
もっとも、確実に眼圧を下げることができる手術です。
目の上方に房水を排出する人工の下水管を作成して、結膜という目の一番上の膜の下に房水を流し下すことで目の眼圧を下げる手術です。
多くの場合、緑内障の点眼を使わなくても正常な眼圧に下げることができます。
さらに、眼圧の日内変動と言って、眼圧が上がったり下がったりすることが、目の神経には良くないと言われていますが、
この手術を行うことでその日内変動が押さえられ、視野の経年劣化が減少または停止すると言われています。
手術後緑内障点眼を使用しなければならないことになっても、この利点は変わりません。
しかし、手術後のしばらくの期間は、頻回に通院していただき、厳重な管理が必要です。
2.隅角光凝固術(SLT;選択的レーザー線維柱帯形成術)
隅角に、YAGレーザーという特殊なレーザー光線を照射することで、眼圧を下げる方法です。
外来で数分で簡便に施行でき、痛みもなく、眼帯をする必要もありません。しかし、緑内障点眼をやめられるほどの効果はありません。
緑内障点眼を続行した場合に術前より眼圧の下降が得られます。また、25%程度の人には、眼圧下降が得られません。
3.低侵襲緑内障手術(MIGS(minimally/micro invasive glaucoma surgery))
iStentという0.36㎜程度のきわめて小さなチタン製の筒を隅角に埋め込み、房水の排出を促す手術です。
白内障手術と同時に行うことが多いです。緑内障点眼をやめられるほどの効果を得られることは少ないです。